さて、犬吠崎の一番高いところまで来て、前半戦の難所を越えてホッとしていたところ、前方で参加者が何人か止まっています。

なんと、前編で「危険な奴ら」と書いた、チームの連中と、その他数人の参加者に加えて、主催者の係りの人と思しき人物も加わり、なにやら話し込んでいます。
事故や、バイクの故障?、なんだか判りませんが、なにやら険悪な雰囲気が漂っていたので「触らぬ神に祟り無し」を決め込んで、先を急ぐ事にしました。

このチーム、エントリーリストには名前は有りませんでしたが、随分の人数が参加していたようで、とあるショップを主体とした、顧客が中心に運営しているチームのようで、本当は健全なチームなんでしょうけど、一部に不届き者がいるのかもしれません。

とこの辺でボヤキは止めておいて(笑)、銚子電鉄の犬吠駅付近を通過します。

この駅では、銚子電鉄名物の「濡れせんべい」などのみやげ物を売っています。
本当はゆっくりしていきたいのですが、今日は通過するだけです。

此処を通過すると、犬吠崎灯台を掠めて、第2CPの「君ヶ浜しおさい公園」は直ぐそこに有ります。


此処では、このイベント恒例の「スイカ」が振舞われます。
この暑さの中激走してきた体には、これ以上無い、堪えられないプレゼントです。
このスイカに、「伯方の塩」をタップリ振り掛けて、振舞われるがままたくさん頂きました。
しかし、この海の青さと空の蒼さは目にしみるなぁ!。

このまま海に飛び込みたいくらいです。

82kmの中間ポイントの此処で、ちょうどお昼の時間になりました。
周りの参加者の中には、「馴染みの店」で海産物を楽しもうなどと歓談している集団も居ます。
もう何度も此処に来ているんですね。
僕も来年参加できたら、お店をリサーチしておいて、美味しいランチを楽しみたいですね。
こういうのがサイクリングの醍醐味だと思います。

まあ、今回の僕はそんな余裕はありません。
とにかく「完走」を目指して、先を急ぎました。
この分で行くと、アクシデントが無ければ、制限時間の10時間は難なくクリアして、9時間を切るくらいでなんとか完走できそうなペースです。
だけど油断は大敵で、此処からが大変になるのかもしれません。

ここから海岸線沿いに、銚子市街地を通過して行きます。
今日は3連休の中日で、天気も良いので観光客が大勢居ます。
あまり急ぐと危ないので自分のペースで走っていましたが、周りの参加者はお昼を取るようで次々と降車してお店に入って行き、僕一人の単独走行になりました。
まあ、コースは完全に覚えていますから困る事は無いので淡々と走ります。

郊外に抜けて、国道356号線「利根水郷ライン」に合流するところのコンビニで、予定通りのお昼休みをとることにしました。
此処から先は、コンビニなどの補給が取りにくいので、十分に補給しようと考えていましたが、これまた他の参加者も同じ考えのようで、店内はサイクリスタだらけです。

お昼はオニギリ二つと、カップ味噌汁です。
味噌汁のように暖かい物を取ると、疲労感が軽減され、おまけに塩分も取れるので効果があるそうです。
ブルベで、カップラーメンが人気が有るという話を参加者から聞きましたがそういうことのようです。

さて出発しますが、北西方向に進む為、南南西の風は、かろうじて斜め後ろからの「アゲインスト」に成るのは、今回大変助かったようです。
昨年の参加者の話では、此処で向かい風で、延々と60km近く走らされて、相当大変だったそうです。

30km/hの結構いいペースで進めますが、この時間は暑さがピークを迎えてきます。
また、海岸線と違い、内陸部に入るにつれて、風が熱く感じられるようになり、ジリジリと体力が奪われていくのが判ります。
利根川大橋から「利根川自転車道」に入りますが、ここに入ると本当に第三CPまで休憩は出来ないので、コンビニで休憩と補給を取ります。
107km地点の此処に来て、合わないペースで加減速を繰り返してきたのと、暑さのせいで、疲労と、脚の消耗を感じてきました。
対策としてレモン飲料を大目に飲んでクエン酸を補給、また、疲労している脚を、念入りにストレッチして回復を計りました。
元に戻ることは有りませんが、これ以上脚の消耗を信仰させない効果は有ったようで、平地なら問題なくいつものペースで走れそうです。

此処からは走りなれた河川沿いの自転車道です。
「鬼怒川自転車道」をホームとして練習している僕には、平坦路の長い道を淡々と高速で巡航するのは、最も得意なシチュエーションです。
いい気になって喜んで前走者を次々とパスして行きましたが、コレが後になって「仇」となります。

ようやく第三CPの道の駅「水の郷さわら」の前にある広場に到着です。
ここでは水と、スポーツドリンクとバナナという、イベントのエイドステーション恒例のアイテムが並びます。
それに加えて「伯方の塩」が置いてありましたので、コップの水に大量に振り掛けて、「塩水」を作り、塩分とミネラルを強制的に摂取します。
普段なら塩水なんぞは間違っても飲みませんが、背に腹はかえられませ・・・・あれっ?、結構美味しいぞ!。
やはり、余程塩分が不足していたのでしょう。
むせるほどショッパイ塩水が、これほど美味しく感じたという経験は、生まれて初めてでした。

さあ、後40kmの道のりです。バナナで「カリウム」も補給して、ゴールに向けて出発しました。
ここで自転車道を下りて、356号線の側道を走ります。
得意なはずの平坦路のはずですが、じわじわと速度が落ちていきます。
脚の大腿筋の辺りに鈍い痺れを感じて、心拍数も落ちませんし、軽い眩暈もします。
これは完全に「日射病」の前兆現象です。

強い日射で、体の熱が逃げないで蓄積され行き、体温も上昇していて筋肉の効率が落ちています。
車で言えば、完全に「オーバーヒート」です。
と、言っても、最近の若い人はわからないだろうなぁ(苦笑)。
神前橋の直前で365号に合流しますが、こんな短い登り坂でもマトモに上がれなくなっています。
これは大変危険で、しかもこの後最後の「山間部コース」が控えているので最大のピンチです!。

とね水郷ラインから、JR成田線を越えて、左折すると山間部コースですが、その手前にあるコンビニに緊急着陸します。
熱射病寸前に加えて、スタミナ、脚の消耗共に、とても山間部コースをあと26kmも走れる状態ではありませんでした。

もうこうなったら最後の手段です。
頼みの綱の、希望の翼を手に入れるために「レッドブル」を飲む事にします。
この手の栄養ドリンクは確かに効果は有るのですが、体内エネルギーを燃焼させる為の成分が主体ですので、エネルギーが切れていてコレに頼ると、たちまち残ったエネルギーも燃焼しつくし、ダウンしてしまいます。
僕の場合、栄養を補給して、尚且つラスト30kmの地点までは封印して呑まないことにしています。

あわせて売っていた「梅干」をたべて、ビタミンを飲んで、天然水のボトルを買って、頭や上半身、脚などに冷たい水をバシャバシャ掛け捲りました。
思いつく対策を施し、冷房の効いている店内で休んでいたら、次第に回復してきました。

さて、こうなったら何が何でも完走を目指すしかありません。
気合を入れて店外に出ると、大勢の参加者が、日陰でうなだれています。
ようやくたどり着いたという感じで、「もう走りたくないよー」という声も聞かれます。
ウンウンその気持ちは僕も同じで、此処で終わりにしたいんですが、自分の脚でペダルを踏みしめて先に進まないと終わらないんですよね。

此処からは長い坂のアップダウンが続くコースが14kmほど続きます。
元気な時にはなんて事の無い山間部コースですが、さすがにインナーローでノタノタ登るのが精一杯です。
他の参加者も同様で、元気一杯追い抜いて走り去るツワモノはもう居ません。

そんな中でも先ほどの「レットブル」が徐々に効いてきて、体力は少しずつ回復していくのがわかりました。
ただ一度消耗した脚はなかなか戻る事は無く、ヘロヘロにヤラレタ前走者に合わせて、アウターで力をこめて登坂していたら、大腿筋が「ピキッ」と、来始めました。
これでは最後の頼みの綱の「スタンディング」で強引に登っていく手口が使えません。
ポジションを替えながら、下りでケイデンスを上げて回して脚のマッサージと血行促進を図り、なんとか悪化させないでこの場を凌ぎます。

こういうときは、春の「もてぎエンユーロ4時間」の時に、攣りながら2時間高速走行した経験が十分に生かされてきます。
あまり褒められた話ではありませんが(苦笑)。

408号に合流して、残りは12kmで、山は後一つだけです。
このまま強引に最後までいけそうですが、最後の山に上る前に、念のため休憩を取って、脚を念入りにストレッチで解して、登坂に備えます。
このストレッチは効果抜群で、乳酸が溜まった脚を、かなりのレベルに回復する事が出来ました。
さすがに強引なダンシングは無理ですが、「休むスタンディング」と軽いギアを組み合わせれば、結構なペースで坂を登ることが出来ました。

最後の山を越えて「安食バイパス」に入れば、ゴールは目前です。
ゴールの「ふれあいプラザさかえ」には、実行委員会の皆さんが揃って、拍手で迎えてくれました。
こういった心使いは嬉しいですね。
その場で参加賞と完走証を受け取り、今日のイベントは終了しました。

正式タイムは判りませんが、GPSのログは以下の通りです。

総合タイムは8時間20分くらい(最初の1.5kmはスタートボタンを忘れた)で、完走は達成、走行時間は6時間47分と、個人的に目標にしていた8時間以内は達成できませんでした。
まあ、アレだけ頻繁に休憩していればしょうがないですね。
獲得標高は763mと、筑波山を2回登ったくらいでしょうか。

ポラールは速度のエラーがあり正確ではありませんがまとめると
走行距離    168km
最高速度    57km/h
AV速度     24.5km/h
最大HR    174
平均HR    132
最大Cad    103
平均Cad    72
消費Kcal    6771

やはりペースが保てていないのは、速度と、特にケイデンスのAVでわかります。
僕の場合ケイデンスのAVが80を切ると、脚が持たない場合が多いです。
驚くのは消費カロリーで、6771KCalというのは、成人男性3日分くらいの値ではないでしょうか。
これで全然体重が落ちていないというのは何故でしょう?(苦笑)。

結構今回は苦労したかもしれません。
その後が、左手の掌に出来た「ブラケットたこ」と、日焼の跡が無言で証明しています。


まあ長々と書き綴っているので、呆れて最後まで読んでいる人は少ないでしょうが、これで僕の銚子センチュリーランの参戦記を終わりにします。
感想として、正直「楽しかった?」と聞かれると微妙なところはあります。
ただ我武者羅に走っているだけでは、あまり面白いイベントではないのかもしれません。
僕自身今回は、「山岳コースの含まれた、夏場のロングライドイベントを走りきる」という目的がありましたから、十分成果があったとは思っていますが。

ただこのイベントは、完走設定タイムが「10時間」というのがポイントかもしれません。
次回僕が参加するのなら、ロングツーリング用バイクの「シラス」にイベント用のホイールを組んで、速度を落として、快適に風景を見ながら走って、銚子で美味しい海産物のグルメを嗜み、めい一杯「10時間」を使い倒して、「サイクリング」を楽しむ方向に進むと思います。

にわかサイクリストの僕ごときが、生意気な言い方をお許しいただければ、要するにこの「銚子センチュリーラン」は、本来の「サイクリング」の楽しみを知っている人達の為の、サイクルイベントであるということだと思います。
さて最後に、このイベントを主催していただいた「千葉県サイクリング協会」の方々を始め、関係各位においては、楽しいイベントに参加させていただいてありがとう御座いました。
来年もお世話になると思いますので、よろしくお願いします。

出来れば「似非ロードレース」を気取る、生意気で危険な連中は排除して欲しいですね(笑)。
あっ、また敵を無用に増やしてしまった!。