昨日は、関東地方は久しぶりの降雪がありました。
若い頃は、雪が降ると喜んで山道に走りに行き、スノードライブを堪能していました。

スタットレスタイヤが出始めた頃は、ホンダアコード(リトラクタブルライトのセダン!)のフロント側だけスタットレスを履かせて、会津街道や日塩道路など、猛吹雪の中、普通に走り回っていましたから呆れた限りです(笑)。

交通量の少ない夜中を選んで走っていましたが、フロントだけスタットレスやゴムチェーンでしたから、九十九折のコーナー毎に、当然大スピン大会の有様で、「認めたくないものだな、若さゆえの過ちと言うのを」でした。
大きな事故を起こさなかったのはひとえに運が良かっただけで、ご先祖様のご加護以外の何者でもありませんでしょう。
まあ、おかげさまで加重移動でヨーコントロールする感覚を磨く事が出来ましたし、低μ路でのスキットコントロールも腕を磨く事が出来たので、良い財産となっています。

その後、全天候性能と、多様な路面状態での走破性、操縦安定性の重要性を痛感して、それが、スバル4WD車を購入する直接の動機になりました。
そこで出会ったのが、「レオーネクーペRXⅡ」でした。

この車は、自動車に対してスペック至上主義で、カッコ良さとパワーと装備をひたすら求めていた僕の自動車という物の考え方を根底から変えて、思想や、運転技術、整備等の大切な基本を教えてくれた、僕の人生で最も大切な車です。

ターボとはいえアンダーパワー(120hp)ながら、比較的軽い重量と、今で言う「ロープレッシャーターボ」で、2400rpmで発揮される最大トルクのおかげで、5×2速のMTを駆使すればかなり活発な走りを見せました。
また、今のSUV真っ青のアプローチ、ランプウェイ、デパーチャーアングルと185mmの最低地上高、またリアのLSDと、センターデフのロッキング機能で、驚くほどの走破性を見せ、ガレ場の荒れた林道でも、ゴロゴロする岩を乗り越えて突破して、対向してきたRV車が「そんな乗用車が、何でこんな所に入ってこられる!」と驚かれた事もありました。
凍結した林道で、傾斜する斜面で谷底に落ちかけたハイラックス4WDトラックを、難なく牽引して救出した事もありました。

雨の日の高速道路は独壇場で、ハイパワーを持て余してノロノロ走るFRのセダンやスポーツカーを、次から次へとごぼう抜きして、何時間走ってもまったく疲れない優れた直進安定性と操縦性能を持っていました。

当時まだ「衝突安全性」という概念が国産車には無かった時代ですが、レオーネのボディ剛性は抜群で、キャビンの堅牢さは当時群を抜いていたと思います。
田んぼ道から飛び出してきた軽トラックに、相当な速度で突っ込んで大事故を起こしましたが、まず、パニックブレーキでフルロックしても4輪の制動力が確実で、真っ直ぐ減速でき、衝突まで相当速度が殺せた事と、キャビンが頑丈だったので、サイドフレームが潰れるほど大破しながら、怪我一つしませんでした。
オマケに、それでもエンジンがかかり、何とか自走できたのは驚きでした。

また、真冬の男体山の裏側の林道で、運転させていた友人がコントロールを失い立ち木に激突し、ラジエーターが破裂してオイルパンも割れ、冷却水やオイルが完全に抜けたとき、マイナス15度の中では凍死してしまうと、意を決してエンジンをかけたところ動き出したので、麓まで30分ほど走りましたが、エンジンは動き続けていた事は驚いたのと、こいつのおかげで命拾いしたなぁと感慨深かったです。

とまあ、書き出すと、語りだすと止まらないくらいのエピソードや思い出が溢れる車でした。

今日のような天候や路面状況でも、レオーネがあれば何の心配も無く、何処にでもいけたのになぁと思うと、一抹の寂しさが襲います。
VSA(ビークルスタビリティシステム?)やABSがあれば、FFであってもスタットレスで凍結路を何の技術も無くとも、特に気をつけなくとも、淡々と凍結路面を走破してくれるのですが、その制御は「回転を抑える」、「動力を抑制する」という物なので、アクセルを踏んでもしかられた子供のようにスゴスゴと回転が落ちて、速度が上がらなくなってしまいます。
また、電子制御で「勝手に車を動かしている」感じが、主導権を奪われたようで、どうにも馴染めません。
4WD(直結及びLSD機能のあるセンターデフを持った)や、フロントやリアデフにやはりLSDが入って、積極的にトルクを掛けて、人間が主導権を持って、ヨー制御ができる来る車の方が、僕は安心できますね。

レオーネのエンジンが、ターボの熱害でゴムや樹脂が劣化してトラブルが多発して、最後は電装系の原因不明のトラブル(ハーネスの断線や、接点のハンダの劣化?)で修理不能となり、泣く泣く手放した後に購入したインプレッサのグラベルEXも、僕としてはRXⅡの後継機として愛して止まない車でした。

見かけはRVモドキのワゴンで、中身は「WRX」という、なんだか訳のわからない車ではありましたが、サスペンションにもWRXのパーツを移植したり、STI仕様のマフラーを入れたりして、満足のいく走行性能を得る事が出来ました。

この車も高速道路の快適性は抜群で、どの速度からでも、アクセルを踏む脚の指先にかすかに力を入れるだけで、アットいうまに速度が上昇し、追い越しに何のストレスも無く、針路変更や高速コーナーで切り込んでも、まったく不安の無い安定したハンドリングは、長距離走行の多かった僕には最高のパートナーでした。
台風直撃の北海道の高速道路で、ボートのように水しぶきを上げながら、何事も無いように突き進む走破性は、本当に心強かったことを思い出します。
でありながら、上の写真のように、雪深い山奥の秘湯に事も無くたどり着ける実力も持っていました。

この車も、主に経済的な理由で維持しきれないと言う事で、手放しましたが、「断腸の思い」でした。
冷静に考えると、レオーネは当然の事として、初期のインプレッサも、経年劣化でコンディションの維持に多大な労力を有することは明白でしたから、そういった車を、どんな状況でも安心して使える「道具」として持ち続ける事は出来なかったと思います。
少なくとも自転車のパーツを買い漁る余裕は出来なかったでしょうね(笑)。

まあこれらの車が既に無く、勇んで車で走り回らなくなった分だけ、自転車でウロツク事になったわけで、人生どう変わるかは、わからないものなんですね。